痛風と高尿酸血症について。健康診断の尿酸値が高かった方はご注意
風が吹いても痛いことからその名がついたという説がある「痛風」。その歴史は古く、レオナルド・ダ・ビンチや古代マケドニアのアレクサンダ-大王といった、多くの歴史的偉人も悩まされた病気として知られています。
痛風はつらい痛みだけでなく、肥満や高血圧といった生活習慣病との合併を引き起こす場合があります。健康診断で尿酸値が高いと言われた方は、特に注意が必要です。
そこで今回は、痛風や痛風の予備軍といわれる「高尿酸血症」についてご紹介します。
痛風と痛風予備軍「高尿酸血症」について
健康診断の項目のひとつに、血液中の尿酸の濃度を示す「尿酸値」があります。血液中の尿酸値が上昇し、その数値が7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」と呼ばれるようになります。
高尿酸血症は、成人の20~25%に認められる病気です。とりわけ男性に多く、高尿酸血症の頻度は、全人口の男性で20%であるのに対し、女性は5%と報告されています。また、高尿酸血症患者の約80%は、高血圧や肥満といった生活習慣病が合併しています。
高尿酸血症自体には、自覚症状がありません。しかし、尿酸濃度が高い状態が続くと、血液に溶け切れなかった尿酸が結晶となって関節内に溜まってしまいます。そして、免疫細胞である白血球が尿酸の結晶を異物と見なしたときに急性関節炎を起こして、痛風を発症するのです。
こうした関係から、高尿酸血症は「痛風の予備軍」と呼ばれることがあります。
女性は少ない?痛風になりやすい人の特徴
痛風患者の95%以上は男性とされ、女性が痛風にかかることは少ないといわれています。女性の痛風患者が少ない理由は、女性ホルモンに腎臓からの尿酸の排泄を促す働きがあるためです。痛風になりやすい人には、次の傾向があるとされています。
・30~50歳代の男性
・高脂肪、高カロリーの食生活を好む、飲酒が好き
・運動不足である、あるいは激しい運動を好む
・不規則的な仕事スタイルである
また、血清尿酸値は遺伝と環境の両方が関係すると考えられています。
痛風の前触れと症状があらわれる部位
痛風の前触れ症状には、患部がほてる、重い感じがするなどがあります。ほかにも痛風発作が起こる直前に、患部がピリピリしたり、ムズムズしたりといった前兆があらわれる場合もあります。
その後、足の親指などの関節が腫れて激痛におそわれます。強烈な痛みは発作的に起こることから「痛風発作」と呼ばれています。
痛風発作は、足関節、足の甲、アキレス腱のつけ根、膝関節、手関節、ひじに起こることもあります。場合によっては、痛風結節(つうふうけっせつ)というしこりのようなものが、耳の外側などの皮膚が柔らかい部分にできてしまうこともあります。
痛風発作が起こってから1~2週間は歩けないほどの痛みが続きますが、次第に痛みは治まり、やがて症状はなくなります。しかし、そのまま治療を受けずに放置していると、再び発作を繰り返すだけでなく、症状がさらに悪化するおそれがあります。
痛風を予防・改善する食事とは?
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』では、高尿酸血症や痛風を生活習慣病として考え、食事療法を取り入れることを提案しています。食事を改善する際は、プリン体の摂取量が1日400mgを超えないようにすると良いとされています。
プリン体とは、細胞の核に存在する核酸の主成分であるアデニンやグアニンなどとして存在する物質の総称です。多くの生き物の細胞に存在する物質なので、ほとんどの食品に含まれており、食品中ではうま味成分としての役割を果たしています。
食事によって摂取したプリン体は、体内で尿酸に代謝されることから、高尿酸血症や痛風の方は控えた方がいいとされています。
プリン体が多い食べ物・少ない食べ物
食品は100gあたりのプリン体含有量(mg)によって、4つの段階に分類することができます。プリン体が多い食品、少ない食品をそれぞれチェックしてみましょう。
【300mg以上:極めて多い】
鶏レバー、マイワシの干物、かつお節、イサキ白子、アンコウ肝(酒蒸し)、にぼしなど。
【200~300mg:多い】
牛レバー、豚レバー、カツオ、さんまの干物など。
【50~100mg:少ない】
玄米、もやし、ブロッコリー、豚肉(肩ロース)、豚肉(バラ)、ボンレスハム、アーモンドなど。
【50mg以下:極めて少ない】
白米、鶏卵、牛乳、チーズ、豆乳、おから、ソーセージ、魚ソーセージ、枝豆など。
アルコール類では、ビール、日本酒、紹興酒、ワインは比較的プリン体が多く、焼酎、ウイスキー、ブランデーは少ないとされています。また、魚類はプリン体含有量が120~180mgのものがほとんどです。そのため、上記のいずれの分類にも属さない傾向があります。
高尿酸血症・痛風を改善、あるいは予防したい場合は、食品ごとのプリン体の含有量を意識して食生活を見直すと良いでしょう。
水分を多めに摂ろう
尿酸の排出を促し、痛風発作を起こさないようにするには、十分な水分摂取を心がけることが大切です。水分補給をする際は、ジュースやアルコール飲料は避け、水やお茶を飲みましょう。
痛風になりやすい人の特徴に運動不足があることから、意識的に体を動かそうと考える人もいらっしゃると思います。しかし、激しい運動で汗をたくさんかくと、体内の尿酸値が一時的に上昇してしまいます。
血液中の尿酸濃度が上昇した状態が続かないように、運動中や運動後にも十分な水分を摂ることを忘れないようにしましょう。
痛風の治療やご相談は仁井田ゆいクリニックへ
痛風発作を繰り返さないためには、尿酸値を管理することが大切です。症状が治まったからといって放置せず、必ず医療機関を受診しましょう。
一方で、痛風発作を起こしたことはないけれど、尿酸値が高いので不安だという方もいるかもしれません。尿酸値が高いほかに何らの生活習慣病や合併症がない場合は、尿酸値を下げる治療の適応外になることがあります。
自分は治療した方がいいのか、生活面でどういったことを心がけたらいいのかと悩まれている方は、ぜひ当院でご相談ください。
地域医療を守り続ける仁井田ゆいクリニックでは、痛風や高尿酸血症の診療も行っています。将来、生活習慣病で悩まないためにも、お気軽に当院へお越しください。