大量飲酒で病気のリスクが高まる?アルコールの適量ってどのくらい?
お酒(アルコール)は、適量であれば人間関係を円滑にしたり、精神的ストレスを減らしたりするメリットがあります。また、血行を促進し、動脈硬化を予防することも期待できるともいわれています。
しかし、お酒を飲み過ぎるとさまざまな病気のリスクが高まるので注意が必要です。
そこで今回は、アルコールが身体に与える影響や大量飲酒でリスクが高まる病気、健康的な飲酒のために心がけたいことについて解説します。
お酒(アルコール)が身体に与える影響
飲酒によって摂取されたアルコールは、胃でゆるやかに吸収された後、小腸で速やかに吸収されます。吸収されたアルコールの大部分は、肝臓で処理(代謝)されます。
肝臓での代謝が進むと、アルコールは二日酔いの原因になる「アセトアルデヒド」になり、次に「酢酸」へと分解されます。酢酸は血液にのって全身へめぐり、水と二酸化炭素に分解されて、最後は尿や汗などに含まれて排出されます。
肝臓は、アルコール以外にも糖質やタンパク質、脂質などを代謝する役割も担っています。そのため、アルコールを摂取し過ぎると、肝臓に負担がかかりすぎて健康に悪影響が出るおそれがあります。
アルコールは、このほかにもすい臓や脳、消化管などに影響を及ぼすので、さまざまな病気のリスクを高めると考えられています。
大量飲酒が原因になる可能性がある身体の病気
WHO(世界保健機関)は、アルコールを飲みすぎると60以上もの病気や怪我を引き起こすと警告しています。今回は、身体の病気からその一部を紹介します。
肝臓の病気(脂肪肝・肝硬変・アルコール性肝炎など)
肝臓は、さまざまな臓器の中でも高頻度でアルコールによる病気が起こりやすいです。代表的な病気に脂肪肝、肝硬変、アルコール性肝炎などがあります。
【脂肪肝】
中性脂肪が肝臓に蓄積する病気です。自覚症状に乏しいですが、疲労を感じやすくなることがあります。飲酒が原因の脂肪肝は、飲酒をやめれば短期間で改善しやすいとされています。
【肝硬変】
肝臓に炎症が生じ、線維(コラーゲン)組織が増え、肝臓が硬くなる病気です。進行すると、食欲不振や黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、腹水などの症状があらわれます。
【アルコール性肝炎】
大量の飲酒が原因で肝臓に炎症を起こす病気です。食欲不振、だるさ、発熱、黄疸などの症状がみられます。アルコール性肝炎を発症した後に飲酒を繰り返すと、肝硬変へ進行する場合があります。
循環器系の病気(高血圧・脳出血・心筋梗塞など)
【高血圧】
血圧が高い状態です。長期間の飲酒は血圧を上昇させ、高血圧の原因になることがあります。自覚症状に乏しいですが、血圧が高い状態が続くと脳卒中や心疾患のリスクが高くなるおそれがあります。
【脳出血】
脳内にある細い動脈が、何らかの原因で破れる病気です。アルコール摂取量が増えると、脳出血のリスクは直線的に増加するとされています。
【心筋梗塞】
血管が詰まり、心臓に血液を供給する冠動脈の血流が悪くなって、心筋細胞が壊死(えし)する病気です。心臓発作と同時に細胞の壊死が始まり心不全をひき起こすため、一刻も早い処置が必要です。
すい臓の病気(糖尿病・すい炎など)
【すい炎】
すい臓に炎症が生じる病気です。すい臓に急激な炎症が発生する「急性すい炎」を繰り返すと、すい臓自体が機能しなくなる「慢性すい炎」になるおそれがあります。
【糖尿病】
インスリンが分泌されないことや十分に働かないことで、血糖値が高くなる病気です。自覚症状に乏しく、体重減少やのどの渇きといった症状が出たときには血糖値がかなり高くなっている可能性があります。
消化管の病気(逆流性食道炎・胃潰瘍など)
【逆流性食道炎】
胃の内容物が逆流することで食道に炎症が起こり、胸やけなどの症状があらわれる病気です。アルコールは胃の内容物の逆流を防ぐための下部食道括約筋を緩めるため、発症しやすいとされています。
【胃潰瘍】
胃の内側にある粘膜や筋層が傷つき、ただれる病気です。アルコールによって胃酸の分泌が促されると、胃粘膜が傷つきやすくなると考えられています。
がん(大腸がん・食道がん・咽頭がんなど)
がんは、細胞の分裂時などに遺伝子が傷つくことで起こる病気です。お酒をよく飲む人は口腔がん、咽頭・喉頭がん、食道がん、肝臓がん、乳がんなどを発症しやすいことがわかっています。
その他(高尿酸血症・痛風など)
アルコールは、プリン体(遺伝子の構成成分)の分解を促進し、尿酸値を上昇させます。
尿酸値が7.0mg/dLを超えている状態を「高尿酸血症」といいます。高尿酸血症によって関節内に尿酸塩結晶が生じると「痛風」になります。結晶は足の親指の付け根や足の甲などにできやすく、痛風発作と呼ばれる激しい痛みを覚えることがあります。
健康的な飲酒のために心がけたい2つのこと
健康に配慮しながらお酒を飲むにはどうすればいいのでしょうか?ここでは、ふたつのポイントを紹介します。
飲み過ぎの人は飲酒量を減らす(節酒)
節度ある適切な飲酒量は、1日当たりの純アルコール摂取量で20g程度とされています。主なお酒の純アルコール量20gの目安は、下の通りです。
女性はアルコールの影響を受けやすい体質で、男性と比べて肝臓が小さいため、より少量の飲酒が適当とされています。お酒に弱い体質の男性や高齢者も、純アルコール量20gより少なめの飲酒を心がけましょう。
【お酒の量を減らすためにできる工夫】
・家にお酒の買い置きをしない
・まわりの人に節酒していることを宣言する
・マイペースでゆっくり飲む
・飲みたくなるような場所に近づかない
・お酒以外の楽しみ(趣味)を増やす
・ひと口飲んだら、必ずグラスをテーブルに置く
・先に料理を食べてお腹をいっぱいにしておく
・ノンアルコールドリンクを飲む、など
休肝日をつくる
アルコールは依存性があるので、習慣的な飲酒を続けていると、徐々に飲酒量が増えてしまうおそれがあります。また毎日お酒を飲んでいると、それだけで胃や肝臓負担をかけることにつながります。そこで、飲酒をしない「休肝日」を設けましょう。
休肝日の理想は週に2日以上ですが、難しい場合は週1日から始めてみてはいかがでしょうか。適量を超える飲酒を毎日続けている方は、週に2日連続した休肝日を設けると良いとされています。また、週3日以上の休肝日があると、傷ついた肝臓などの臓器が回復する可能性があると考えられています。
ビールのような炭酸を含むお酒を飲むことが多い方は、休肝日に炭酸飲料を飲むのがおすすめです。また、ノンアルコールドリンクを活用するのも良いでしょう。
思い当たる症状があるときは当院へ
お酒を飲み過ぎたり、毎日の飲酒が習慣になっていたりすると、アルコールの影響でさまざまな病気のリスクが高くなる可能性があります。お酒を楽しく飲むには、適量飲酒や休肝日を心がけることが大切です。また、肝臓などに影響が出ていないか定期的に検査を受けることも忘れないようにしましょう。
飲酒習慣がある方で気になる症状がある方、健康に関する悩みがある方は、かかりつけ医にご相談ください。当院でも地域のかかりつけ診療所として幅広く対応いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。