脂肪肝とは?治る病気なの?原因・症状・禁酒期間の目安について
日本人の3人に1人が、脂肪肝だといわれています。あなたは、健康診断や人間ドックで脂肪肝と指摘された、あるいは脂肪肝予備軍だと注意を受けた経験はありませんか?
脂肪肝は、放っておくと肝硬変や肝臓がんへと進行する可能性がある病気です。その一方で、脂肪肝は生活習慣の見直しなどで治る可能性があります。
そこで今回は、脂肪肝の原因や症状、改善に向けた生活習慣の見直しポイントについて解説しましょう。
脂肪肝とは?
脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓に蓄積する病気のことです。肝細胞の30%以上に中性脂肪がたまると、脂肪肝と診断されます。
肝臓に蓄積された中性脂肪は、やがて全身の血管に運ばれ、血液中のLDL(悪玉)コレステロールを増やし、動脈硬化などを招くことがあります。また、脂肪肝はメタボリックシンドロームや狭心症、心筋梗塞などと合併しやすい点でも注意が必要です。
健康診断の数値はココを確認
脂肪肝の場合、健康診断の結果で肝機能を表すALT(GPT)やAST(GOT)の値が50~100 U/L前後に上昇する場合が多いとされています。また、γ-GT(肝臓や腎臓などでつくられる酵素)やコリンエステラーゼ(肝細胞でのみつくられる酵素)が高くなる場合もあるので、あわせて確認すると良いでしょう。
ALT(GPT)の基準値は30U/L以下ですが、20U/L以上であれば脂肪肝予備軍といわれています。
脂肪肝の疑いがある場合は、血液検査の結果と超音波検査やCTスキャンなどの画像検査をあわせて診断します。
脂肪肝の主な原因4つ
脂肪肝の主な原因は次の4つです。
・食べ過ぎ
・運動不足
・肥満
・お酒の飲みすぎ
食べ過ぎの中でも特に気をつけたいのが、脂質や糖質の摂り過ぎです。脂質や糖質を分解してできた脂肪酸やブトウ糖が使い切れなかった場合は、中性脂肪として肝臓に蓄えられてしまい、脂肪肝の原因になります。
また、食べ過ぎと運動不足によって摂取カロリーが消費エネルギーを上回ると、肥満による脂肪肝になることがあります。肥満は肝臓での脂肪酸の燃焼を悪くするとされており、肥満者の80%が脂肪肝といわれています。
お酒の飲みすぎが原因の脂肪肝は、アルコール性脂肪肝と呼ばれています。アルコールを分解するアセトアルデヒドという物質が肝細胞を傷つけ、脂肪の分解を抑制し、肝臓に中性脂肪の蓄積を促すため脂肪肝になりやすいとされています。
このほか、糖尿病・ステロイド剤の服用なども原因になることがあります。
【日本人は食べ過ぎによる脂肪肝が多い?】
脂肪肝というと、お酒が原因と考える人が多いかもしれません。しかし、日本人の脂肪肝では食べ過ぎによるものが多いとされており、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼ばれています。
NAFLDには肝細胞に脂肪が沈着するだけの単純性脂肪肝(NAFL)と脂肪肝から肝炎・肝硬変となる非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)があります。NAFLDの患者の約2~3割がNASHへ進行するといわれており、注意が必要です。
見た目がスリムでも脂肪肝のことがある?
日本では、BMI値が25以上の人を肥満としています。しかし、BMIが25未満で標準体型~スリムな体型でも脂肪肝になることがあり、「隠れ脂肪肝」といわれています。隠れ脂肪肝の方は、BMIが22未満でも血液検査では肝機能異常を指摘される可能性が高いです。
また、過剰なダイエットが原因で脂肪肝になることもあります。無理なダイエットによりたんぱく質が不足すると、中性脂肪が血液中に送られなくなり、肝臓に蓄積されるといわれています。
脂肪肝の症状
脂肪肝の初期にはほとんど症状がないため、自覚することは難しいです。しかし、中には疲れやすい、肩がこる、頭がボーッとするといった症状を自覚するケースもあります。これは、脂肪肝になると血液がドロドロになり、全身の細胞に酸素と栄養分が補給されなくなるためです。このほか、漠然とした腹部の不快感を覚えるケースもあります。
これらの症状に思い当たりがある場合や、健康診断の結果に不安がある場合は、まずは医師に相談してみましょう。
脂肪肝は治るの?
生活習慣が原因の脂肪肝は、生活習慣を見直せば治る可能性があります。実は、肝臓についた脂肪はとれやすいとされているのです。
ここでは「お酒の飲みすぎ」「食べ過ぎ」「運動不足」の3点から、脂肪肝の改善に役立つポイントを解説します。
禁酒期間の目安は?
お酒の飲みすぎによる脂肪肝は、禁酒により改善すると考えられています。まずは3日間から禁酒を始めてみましょう。3日間禁酒をすると、睡眠の質が高まるなど身体に良い影響を与えるといわれています。
3日間の禁酒ができたら徐々に期間をのばし、2週間の禁酒に挑戦してみましょう。2週間禁酒することで肝臓の負担を減らし、正常な状態へ向かわせることができるとされています。
禁酒が続けられるようになったら、1か月頑張ってみましょう。禁酒と適正な食事を心がけると、肝臓の脂肪や体重が減少する可能性があります。さらに、禁酒を2~3か月続けると肝臓の脂肪がほぼ消失した例も報告されています。
このように、肝臓脂肪を減らすことを考えたら1か月を目安に禁酒を始めるのがおすすめです。ただし、禁酒期間の目安には個人差があるので、医師に相談の上で無理なく進めるとより良いでしょう。
【禁酒期間にお酒が飲みたくなったら?】
ビールのような、のど越しがある炭酸水を飲んだり、ノンアルコール飲料に置き換えたりすると良いでしょう。
食事のとり方で気をつけたいことは?
調理油や肉類などの脂質が多い食べ物や、炭水化物や甘いものといった糖質が多い食べ物の摂りすぎに注意しましょう。
あわせて、インスリンの急な上昇を抑えることも大切です。インスリンはホルモンの一種で、余った糖を中性脂肪として蓄える働きがあります。先に野菜をたっぷり使ったおかずを食べ、糖を含む炭水化物を最後に食べればインスリン上昇の抑制に役立ちます。
運動は脂肪肝の治療に役立つ?
運動には、「適正体重に戻す」「脂肪を燃やす筋肉を増やす」といったメリットが期待できます。ウォーキングなどの有酸素運動は脂肪肝の改善につながるので、ぜひ生活習慣の中に取り入れましょう。目安として、1日30分以上歩くと肝臓にたまった脂肪が減りやすくなるといわれています。
筋肉を増やすには、スクワット5回や左右1分ずつの片脚立ち、1日10回程度のつま先立ちなど、自宅で手軽に取り入れられるものから始めてみると良いでしょう。
生活習慣の見直しによって脂肪肝が治った後も継続が大切です。再発した脂肪肝は、NASHに進みやすい傾向があるといわれています。
脂肪肝について当院までご相談ください
当院の内科・生活習慣病外来では、脂肪肝の診療を行っております。最新のガイドラインに準じた最低限の投薬と治療を心がけ、生活習慣の改善につながるアドバイスも可能です。
健康診断で肝臓の数値が気になった方や、脂肪肝の心配がある方は、まずは当院までお気軽にご相談ください。