COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは?原因・症状・治療をわかりやすく解説
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、厚生労働省の「健康日本21(第2次)」で対策を講じるべきといわれている肺の生活習慣病です。しかし、依然として慢性閉塞性肺疾患の認知度は低く、秋田県在住の方を対象にした調査では約80%が「知らない」と回答しています。※
そこで今回は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を疑う特徴や症状、原因、治療についてわかりやすく解説します。
※秋田県「健康づくりに関する調査報告書(令和3年度)」参照:「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」という言葉の意味の認知度について、63.6%が「まったく知らない」、17.3%が「言葉は聞いたことはあるが、意味はよく知らない」と回答。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは?
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、有毒物質(粒子やガス等)を長期的に吸入することなどによる、進行性の肺疾患です。
正常な呼吸を妨げ、生命を脅かすおそれのある疾患であり、2030年には世界の死亡原因の第3位(死亡原因の8.6%)になると予想されています。
COPDの疑いがあっても治療を受けていない人が多い
日本人の40歳以上を対象にしたCOPD有病率は8.6%、そして約530万人の患者が存在すると推定されています(NICEスタディ調べ)。しかし、500万人以上の人はCOPDであるにもかかわらず病院で診断や治療を受けていないと考えられています。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)を疑う特徴
COPDを疑う特徴には、次の6つがあります。思い当たりがある場合は、自己判断で放っておかず、早めに医療機関を受診することが大切です。
【1】喫煙歴あり(特に40歳以上)。
【2】咳(特に痰が絡む湿った咳)、痰、喘鳴。
【3】労作時(階段や坂道の登りなど)の息切れ。
【4】風邪をひいたとき、1や2に該当する。
【5】風邪の症状を繰り返す、回復に時間がかかる。
【6】心血管疾患、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症の患者である。
心血管疾患や高血圧症、糖尿病などはCOPDに多い併存症といわれています。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の原因
COPDになると、空気の通り道である気管支が狭くなり、気管支の先にある空気が入った袋(肺胞)まで炎症を起こすようになります。
肺胞は、呼吸による酸素と二酸化炭素の交換が行われる場所です。その肺胞が炎症によって酸素を取り込めなくなると、やがて呼吸がスムーズにできなくなってしまいます。
COPDを引き起こす主な原因はタバコの煙であり、タバコ以外の原因では粉塵や化学物質などが考えられています。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とタバコについて
COPDの最大の原因は喫煙です。喫煙者の15~20%がCOPDを発症するといわれており、患者の90%には喫煙歴があるとされています。COPDに気づかず喫煙を続けることで、重症化を招くケースも多くみられるので注意が必要です。
また喫煙だけでなく、受動喫煙もCOPDになるリスクを高める原因になることがあります。
タバコ以外のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の原因
COPDのタバコ以外の原因として、あらゆる職種で発生する大気汚染物質や、有機燃料(バイオマス)を燃焼させたときの煙の吸入が挙げられます。COPD患者のうち、約15%が職場での曝露が原因です。このほか、ほこり(有機、無機)、ヒュ―ムなどが関連している可能性もあるとされています。
このほか、幼少期の肺の発育障害や遺伝もCOPDの原因のひとつと考えられています。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の症状
COPDは害が長年に蓄積して起こる病気なので、発症と経過がゆるやかで、中年以降に症状が出てくることが多いのが特徴です。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の初期症状
COPDの初期症状では、咳や痰などがみられます。これらの症状は、初期では一時的ですが、徐々に毎日起こるようになります。一般的に痰が絡む咳が多いですが、乾いた咳の場合もあります。
長引く咳や痰は、加齢や風邪によるものと思われやすいので注意が必要です。症状がある程度進行したら、呼吸困難(息切れ)が持続的に、あるいは反復的にみられるようになります。
一方で、COPDの初期では自覚症状がないという場合もあります。
症状が進行したらどうなるの?
COPDの症状が進行すると、身体を動かしているときに呼吸困難(息切れ)があらわれ、日常生活に支障をきたすこともあります。呼吸困難は、症状が進行すると持続性のものになります。呼吸困難の悪化によって、次の症状がみられることも少なくありません。
・体重減少
・食欲不振
・呼吸不全
・右心不全
呼吸不全は血液中の酸素が少なくなる状態で、ひどい息切れや皮膚や爪の変色などが起こります。右心不全は心臓の異常により必要な血液を送れなくなる状態で、消化器症状や腹水、浮腫などがみられます。また重症になると、呼吸時にヒューヒュー、ゼーゼーなどの音がする喘鳴が起こる場合もあります。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の検査と治療について
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は完治しない病気ですが、治療によって進行を遅らせることが可能です。COPDの疑いがある症状や不調があるときは、早めに医療機関を受診し、必要に応じて検査を受けましょう。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の検査
COPDの診断に最も重要な検査として、肺活量などを測定するスパイログラムがあります。この検査によって、空気の通り道である気道・気管支が狭くなっていないか(気流閉塞)を調べることができます。
また、胸部単純X線写真は、進行したCOPDを評価したり、ほかの病気の可能性を除外したりするのに有用です。胸部CT検査では、気腫性病変と気道病変を評価することができます。そのほか、動脈血ガス分析、血中酸素濃度の測定、血液検査、心電図検査なども行います。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療
COPDの治療には、薬物療法と非薬物療法があります。薬物療法では、気管支を広げ、呼吸をしやすくする気管支拡張薬が中心となります。ほかにも、痰をとる喀痰調整薬などが用いられる場合もあります。
非薬物療法では、禁煙が必須です。禁煙補助薬(ニコチンパッチやニコチンガム)などのお薬を用いて、禁煙する場合もあります。また、症状の増悪を防ぐために、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの接種も重要とされています。重症化した場合には、酸素療法や外科療法が行われる場合もあります。
栄養管理も大切
呼吸リハビリテーションの一環として、極端な肥満ややせを避けるための栄養管理も必要です。COPD患者では高頻度で栄養障害がみられ、症状が重くなるほど著しい体重減少が認められています。
COPDの栄養障害に対しては、基礎代謝の1.7倍程度の高カロリ―摂取、体重あたり1.2~1.5gの高たんぱく食が基本とされています。また果物、野菜、魚類、全粒穀物が豊かな食事は抗炎症に役立つと考えられています。栄養療法とあわせて運動療法を行うことも推奨されています。自分にあった栄養管理や運動の取り入れ方は、医師と相談しましょう。
早期発見・早期治療が重要な病気なので早めに受診を
長期の喫煙歴があり、慢性的に咳や痰が出る場合や、身体を動かしたときに息切れがあればCOPDが疑われます。「一時的なものだろう」「ただの風邪だろう」と思わず、医療機関を受診し、検査を受けてみましょう。
当院では内科・生活習慣病外来の診療を行っており、慢性閉塞性肺疾患をはじめ、さまざまな疾患や症状に幅広く対応しております。
COPDは進行性の病気なので、早期発見・早期治療が重要です。思い当たる症状がある方は、まずは当院までご相談ください。